街なかかわらばん佐賀

馬渡 康隆さん

Dig-It BMX代表

佐賀の街なかで練習しながら、いつか世界一になるライダーを育てて行きます

私は神埼市でBMXという自転車の輸入専門店を経営しています。BMXとは20インチの自転車を自由に扱い、フィギュアスケートのような高速スピンやオートバイのモトクロスのような空中技などを競うスポーツです。
 

さて私は2008年に佐賀に戻って来たのですが、その時の感想が「なぜ街なかに人が少ないのか？」というもの。「郊外に大型店舗ができたから？ 駐車場がないから？」、それは思うに街の魅力が無くなっているからだと思います。そこで私が考えた街づくりが、スポーツや遊びを通じて若い人達を集めるやり方でした。例えば以前、呉服元町有志の皆さんと商店街PRのため、三輪車12時間耐久レース（フジテレビ24時間テレビ内の企画）に参加。私は三輪車製作とメカニックを担当しました。その経験を通して「BMXで佐賀の街を元気にしたい、若い人達にBMXという遊びやスポーツを伝えたい」と考えるように。今まで佐賀ではイベントをしたことがなかったので、ならば日本全国からBMXライダーが来る大会を開こうと決意しました。そこでまずは街の人達にBMXを見てもらう機会を作るため、656広場で無料のBMXスクールを開催。今思えば初めてこの広場を使わせて頂いた時のことは、ずっと忘れません。おそらく始める前は「リニューアルされたばかりの656広場が痛むのではないか？」、「若い子が騒いだりしないだろうか？」 等々、貸す方としては心配があったはずですが、懇願してなんとか許可を頂きました。そして迎えた初めてのBMXスクールの日。自分達だけで盛り上がるイベントにはならないように気を配りました。人通りは少ないけれど少しでも足を止めてくれたならいいなと。そしてスクールも中盤にさしかかった頃、会場前のお店の方が僕達に「おでんがあるけん食べんね」とご馳走していただきました。実は音がうるさいと怒られるんじゃないかと思っていたので、涙が出るほど嬉しかったです。
 

それからはスクールを定期的に実施できるようになり、2011年7月には、ついに九州では一番規模の大きな競技会としてBMXコンテスト「佐賀のRUN」を開催。全国のライダーが「福岡のような都会」ではなく、わざわざ佐賀に来てくれたんですよ! そして2012年からは、近隣商店の皆さんや市内、県内の企業様などから佐賀の物産等を協賛して頂けるように奔走したり、会場周辺のお店や駐車場の案内チラシを作ったりしました。できるだけ街のお店で食事や買い物をしてほしいですし、また佐賀に来たいと思って頂けたら最高ですからね。その後2014年には行政や各種団体、メディアの皆さんからも後援を頂けることに。
 

ところで私が常々感じるのは、佐賀にはチャンスが多いということ。首都圏にいた時は全てが用意されており、自ら動く必要性も意欲も感じませんでしたが、佐賀では何も用意されていないだけに、実は逆に行動し易い街です。さらに本人のやる気さえあれば協力してくださる人も多い。その証拠に多くの方の協力で、656広場でのイベントやバルーンフェスタをはじめとする多くのイベントができています。人と人が近く、街がコンパクト、そして何より佐賀を愛している優しい人が多いこと。それが佐賀の最大の魅力だと思います。こうやってBMXを佐賀の街で練習しながら、いつか世界一になるライダーを育てて行くのが僕の夢です。

（Profile）

神埼市出身。1991年、神奈川県厚木市でBMX（バイシクルモトクロス）自転車の輸入販売をするDIG-IT （ディギット有限会社）を起業。日本では初めてのBMX専門の店を開く。主にアメリカ、ヨーロッパから自転車、パーツなどを輸入、またオリジナル製品の開発。その後、1994年からはBMXフリーペーパーを創刊し日本全国、アメリカ、ヨーロッパなどでも取材活動をして、世界のシーンを目の当たりする。そして1996年からはプロBMXライダーと契約し、BMXチーム「TEAM DIG-IT」を結成。世界、国内のコンテストを転戦し2000年、2005年には全日本チャンピオン、2001年には世界チャンピオンを輩出。同時にBMXの認知度アップと底辺を広げるためにBMXショー活動も開始し、日本全国で活動中。また2008年、会社ごと佐賀に移転。現在は神埼市で店舗を営業。656広場では定期的にBMX教室を開いており、毎夏にはBMXの全国大会を開催。他にも2012年よりDJ SKIP名義で、えびすFMにてサガン鳥栖とBMXの番組「saganBMX」のパーソナリティーを勤めている。