街なかかわらばん佐賀

佐賀出身者からの手紙(唐松 奈津子さん)

2015年7月30日


唐松 奈津子さん

㈱スパルタデザイン 代表取締役

 

いつのまにか「佐賀に帰るのも悪くないな」に変わってきました。
 

佐賀さん、ちょっとご無沙汰してます。お元気ですか。帰省するたびに目に入るシャッター通りの風景から察するに「きっとお元気じゃないんだろうな」と思っていたのは数年前まで。ここ数年は「きっとそこそこお元気なのだろう」と勝手に思っています。なぜって、山手線に乗れば「チャリさがさいせい」という佐大の学生さんの取り組みがトレインチャンネル(電車内の広告モニター)で紹介されていたり、知り合いの新進気鋭のコピーライターが「佐賀の手伝いをしてるよ」とそちらまで飛んでたり、上場企業の社長からクリエイター育成のためのプロジェクトを佐賀で展開していると聞いたり。ここ数年、それまでとは打って変わって、東京の色んな場所で、今の「佐賀」を知ることができるようになってきたからです。この「街なかかわらばん」を発行する「ユマニテさが」さんの活動もきっとその後押しをしてるんでしょう。
 

さて、今回の街なかかわらばんの特集は「ピクニック」だとか。ピクニックをしたくなるような自然のある場所は佐賀に溢れていますが、私が思い描く佐賀の風景にはいつも「水場」があります。思い返せば、小学校~中学校時代を過ごした西田代の家の前には川が流れていました。タニシやザリガニを取ったり、妹弟と当時飼っていた2匹の犬を川に放り込んで一緒に泳いだり、橋の下に隠れて涼んでみたり。今考えると「毎日がピクニック」(笑)。大人になってタニシやザリガニの棲む川はきれいな川だと知って随分驚いたものです。だって小学生の私にとってその市内の川はキレイ度ランキングでいけば、せいぜい「中の下」。もっと県北に行けばさらに透き通った水場があるのを当時から知ってましたから。毎年ゴールデンウィークに帰省するのですが、必ず立ち寄るのは川上峡。結婚するまで本籍地は唐津の海のそば。実家は北川副に引っ越した今も大きな河川のそばにありますし、隣の祖父母宅の裏庭には小川(というと素敵ですが、ただの用水路)も流れています。小学校・中学校と歩いて通ったのはお堀の歩道で、高校の塀の脇にも小さな川が流れていました。そもそも佐賀県自体、南北を海に挟まれた土地。川、クリーク、お堀にダム。湖もあったっけ。そんな美しい水場に溢れた佐賀で高校までの18年間を過ごし、大学進学時に「もう佐賀には帰らない」と両親に豪語して東京に来た私。数年前まで帰省するたびに「やっぱり佐賀は狭くてつまらない」と思ってきたのも事実です。でも、東京で子どもを産んで、何もかも用意された便利な都会の生活が子どもたちの可能性を狭めている気がして、どちらが「つまらない」のかわからなくなりました。7年前に今の会社を作り、広告デザインの事業と育児グッズの通販事業とを展開していますが、印刷が必要な時は佐賀の印刷会社にお願いしてますし、商品企画やグッズ製作の内職などは佐賀のママたちにも手伝ってもらっています。いつでもどこでも仕事ができるインフラが整った今となっては、若かりし日に豪語した「帰らない」も、簡単に「帰るのも悪くないな」に流れています。
 

(Profile)
1979年佐賀市生まれ。附小・附中→西高→お茶の水女子大・広告デザイン学院卒。(株)リクルート入社、その後、広告制作会社・ブランドデザイン会社のディレクター・マネージャーを務める。2006年に結婚、子どもが生まれても、子どもを横に置いて仕事ができるよう広告デザイナーとして独立。2008年に(株)スパルタデザイン設立、代表取締役に就任。と同時に妊娠が発覚、同時期に妊娠したデザイナーと妊婦2人で営業を開始することに。自身の妊娠・出産の経験を通して「育てながら働くこと」の大変さを思い知り、2009年7月に“ママ・パパの在宅ワークを支援する”手作り育児グッズ通販サイト『mammani(マンマーニ)』をオープン。「子育て世代が、自宅で子どもを横に置きながら楽しんで仕事ができる環境の提供」を目指している。

一覧へ戻る

市民ライタープロフィール

アバター画像

氏名:編集室

街なかのイベント情報、その他TOPICS的な内容を紹介します。

編集室 さんの投稿記事

おすすめホームページ

お問い合わせ