街なかかわらばん佐賀

佐賀の街なかで自分らしく暮らす人④(岡本 啓さん)

2015年12月1日


岡本 啓さん

和紅茶専門店 紅葉 ~くれは~ 代表

 

20年後を考えるなら、この場所は絶対に面白いですよ 

 

10月の秋空。開店前の店内で和菓子の仕込みをしながら紅茶を試飲。季節が変れば水の性質、人の味覚も変わる。お湯と茶葉の扱い方も微調整が必要。28歳で独立し紅茶専門店を開いてから、すなわち私が佐賀に来てからもうすぐ15年になります。白山のチャレンジショップ内に2坪の店舗を開き、その後商店街から諸富町のHAPPY TREEさんのところへ移転。そこで多くの経験を積ませてもらい、お客様も全国から足を運んで来ていただけるような、それなりの店になってきました。私のお店は「和紅茶」という少し変わった商品がメインになっていて、全国でも珍しい和紅茶の専門店。地元嬉野をはじめ、鹿児島、静岡、奈良など、全国の紅茶を揃え、農家さんの畑を見て、原料を吟味し、直接仕入れる事で他のお店には揃わない珍しい紅茶を揃える事が出来ています。その為でしょう、お茶に興味のある人達が他で見る事の出来ない貴重な和紅茶を楽しみにお店に来ていただきます。
 

そんな中、遠方より足を運んで頂くお客様に「せっかくなら佐賀の魅力をもっと堪能していってほしい」という思いが強くなっていきました。なにせ、わざわざ京都や広島から来て、紅茶1~2杯飲んでそのまま帰っていく人もいます。恐ろしくは、お茶好き人の数奇っぷり。とはいえやはりもったいない。そんな想いの中、数年前からもし佐賀市内に移転をするなら、絶対ここ、と決めている場所がありました。そこが旧長崎街道、別名シュガーロードが通る柳町。かつては町人と武士が行きかった文化の交差点。砂糖が運ばれ、近代和菓子文化を育んだ出発点。和紅茶という新しい喫茶文化を発信する基地としてこれほど適した場所は無いといってよいでしょう。5~6年前から周囲に「数年以内に柳町に移転する。柳町に行けないなら背振の山奥の誰も来ない場所でひっそりと営業する」と公言して回りました。公言することで自分を追い詰める。学生時代からやっている、怠け者の自分への対処法。その甲斐あって今年2月、念願の柳町に改めて和風喫茶として移転オープンする事が出来ました。柳町はやはりいい。県外からのお客様も喜んで頂けるし、佐賀市内の人にも新鮮味があります。まだ人の通りは多くはないですが、環境の変化に強い経営体質にするにはその方が好都合。ゆったりとしたお茶を楽しむ時間を提供できますし、なによりもこれからの伸び代が大きい。時折「通りが少なくて経営は大変じゃないですか?」と心配をされる方もいますが、私の答えは決まっています。「今すぐ稼ぎたいなら別の場所にお店を開いた方が有利でしょうね。でも、20年後を考えるならこの場所は絶対面白いですよ」。60才になった時、自分はどんな経営戦略を描いているか?1人でニヤニヤしているうちにお菓子の仕込みも終わる。
 

さて、今日はどんな風にお茶を淹れようか。秋風を感じれば答えが見えるはず。

 

(Profile)

28歳でトラック運転手から独立して佐賀市内に紅茶専門店“紅葉”を開店。その後諸富町に移転し、数年を経て2015年2月に柳町の旧森永家住宅内へ移転オープン。国内でも珍しい和紅茶に特化したブレンダーで、日本中の茶農家のもとを回り交流を重ねている。また紅茶とのペアリングを研究し、全国の老舗和菓子店やホテル、レストランなどから紅茶のブレンド依頼があり、その素材や諸条件を加味したうえで紅茶を提供している。イギリスのケンブリッジ大学で行われた国際親善茶会において、和紅茶で席主を務める。日本初の和紅茶専門書「和紅茶の本」を出版。その他、全国での講演、教室の開催、生産者への指導など和紅茶の魅力と可能性を伝える為に帆走中。


 

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